フルケーブダイバーへの最終パート
こんにちは、マヤンアンダーワールドのみきです。
ひとつ前のブログは体験ダイビングについて書きましたが、今日はフルケーブコースについての内容です。
そもそもフルケーブダイバーとは。と、馴染みのない言葉なのではないでしょうか。
ダイビングの世界にはさまざまなレベルや分野がありますが、その中でもフルケーブダイビングはまさに最上級。ライセンスをお持ちでない方向けの体験ダイビングコースから見ると、まるで別世界のお話で、高度なスキルや経験はもちろん、知識や判断力、そして強いメンタルも求められるコースです。
ここ、メキシコ・ユカタン半島の地下には、アリの巣のように縦横無尽の地下水脈が張り巡らされています。この地下水脈への入り口(開口部)は、かつてこの地域に栄えたマヤ文明の言葉で「セノーテ」と呼ばれています。
一般的なレクリエーショナルダイバーの皆様は、地下水脈へと繋がるこの開口部から、光が届く範囲内でのみダイビングをお楽しみいただけます。
もちろんそれだけでも十分に美しく、この土地ならではの唯一無二の景色をご覧いただけるのですが、その限られた光の届く範囲の先には、想像をはるかに超える世界が広がっているのです。
どのくらいかというと、例えばギネス記録にもなっているケーブシステムの総距離は東京〜広島間ほど。次に続くケーブシステムでも東京〜名古屋間ほど。10kmほどのケーブシステムなら、もはや珍しくありません。
そして驚くべきことに、この地下世界への入り口(セノーテ)は、確認されているだけでも3000~4000箇所。その全てを潜り知り尽くそうと思ったら、一生かかっても足りないほどです。
なぜなら、その10km、300km、1400km という距離が一本の直線なわけではなく、文字通り縦横無尽に枝分かれしながら続いているから。いくつもの分岐点があり、そのひとつひとつにまた新たな未知の空間が待っているのです。
そんな地下水脈でのダイビング。開口部から進入する距離が長くなるほど、外の光は次第に遠ざかり、やがて辺り一面光の届かない完全な闇に包まれます。
もし器材にトラブルが起きたら。もし自分が今どこにいるのか分からなくなったら。
通常のオープンウォーターダイビングのように、とりあえず浮上する。という選択肢は存在しません。それが頭上閉塞環境でのダイビングです。この一点だけを取っても、挑まないという選択をするには十分すぎるほどの理由があると言えるでしょう。
それでもなお、私やグスタボ含め一定数のダイバーがこうしたダイビングに強く惹かれ、自ら進んで向き合おうとするのは、十分な知識と訓練があってこそ成立する世界であることを知っているから。
ケーブダイビングを始める理由は人それぞれでも、共通していることは、危険だから避けるのではなく、安全に成立させる方法があると気づいた瞬間が、入り口になっているのではないでしょうか。
大手ダイビングショップのスタッフとして勤務しながら、普段はカリブ海での講習や体験ダイビングを中心にインストラクターとして活動しているJuan。この環境を最大限に活かし、自身の次なるステップとして、ケーブコースの最終パートを私たちに託してくれました。
ケーブコースは、大きく3つのステップに分かれています。
基礎スキルの底上げ ー カバーンダイバーコース。
緊急時の対処法(ダイバーをロストした時、ガイドラインをロストした時) ー イントロトゥケーブダイバーコース
複雑なナビゲーション ー フルケーブダイバーコース
これまでに足りない課題の補填がありながらも、焦らず落ち着いた判断で、ひとつひとつ向き合うJuan。
そしてこのコースの本題となる「複雑なナビゲーション」。
スティックマップとカルトグラフィーという2種類の地図から必要な情報を読み取り、それを実際のダイビングに照らし合わせていく。
その積み重ねの先にあるのが、複雑なケーブそのものを確実に正確に読み解く能力です。
複雑なナビゲーションパターンが実際の環境で無数に存在するリビエラマヤだからこそ、机上の理解で終わらず、知識と判断力を現実のダイビングに落とし込むことができる。この土地最大の利点です。
さらに、グスタボからコースを受ける価値・面白味といえば、彼自身の実体験に基づく必要とされてきた小さな判断の数々、ケーブレスキューチームに所属しているからこそ共有できる過去の事例とその分析を交えながら伝えられる、現場に根ざした生の情報にあります。